AWS VPC Lattice Resource Gateway と NLB+VPC Endpoint 構成の比較分析

概要

本記事では、AWS VPC Lattice の Resource Gateway と、従来の Network Load Balancer (NLB) + VPC Endpoint Service + VPC Endpoint 構成について、コスト・セキュリティ・パフォーマンスの観点から詳細な比較分析を行います。

AWS Documentation MCP を利用し調査した結果です。

比較する構成

構成1: NLB + VPC Endpoint Service + VPC Endpoint

  • Network Load Balancer
  • VPC Endpoint Service
  • VPC Endpoint

構成2: VPC Lattice Resource Gateway

  • VPC Lattice Service
  • Resource Gateway
  • Resource Configuration

コスト比較

AWS Pricing APIを用いた2025年12月時点の料金調査結果に基づく比較です。

NLB + VPC Endpoint Service + VPC Endpoint

コンポーネント 時間単価 月額基本料金
Network Load Balancer $0.0225/時間 $16.20
NLB LCU使用量 $0.006/LCU時間 使用量による
VPC Endpoint Service $0.05/時間(リモートリージョン毎) $36.00
VPC Endpoint $0.01/時間 $7.20
データ処理費 $0.01/GB(1PBまで) 使用量による

月額基本料金合計: 約 $59.40 + 使用量ベース料金

VPC Lattice Resource Gateway

コンポーネント 時間単価 月額基本料金
VPC Lattice Service $0.025/時間 $18.00
Resource Gateway $0.02/時間(リソース毎) $14.40
データ処理費 $0.025/GB 使用量による
接続・リクエスト $0.0000001/時間 微小

月額基本料金合計: 約 $32.40 + データ処理費

コスト分析結果

  • VPC Lattice の基本料金は約 45%安い
  • データ処理費は VPC Lattice の方が2.5倍高い
  • 低〜中程度のデータ転送量であれば VPC Lattice が有利

セキュリティ比較

セキュリティ項目 NLB+VPC Endpoint VPC Lattice Resource Gateway
ネットワーク分離 ✅ 完全なプライベート通信 ✅ 完全なプライベート通信
IAM統合 ⚠️ 限定的なサポート ✅ 細かなアクセス制御が可能
認証・認可 ❌ NLBレベルでは基本的 ✅ サービス・リソースレベル対応
ネットワークACL ✅ VPC・サブネットレベル ✅ Service Network レベル
セキュリティグループ ✅ 標準対応 ✅ 標準対応
監査ログ ⚠️ CloudTrail, VPC Flow Logs ✅ CloudTrail + VPC Lattice専用ログ
暗号化 ✅ TLS終端可能 ✅ TLS終端可能

セキュリティ分析結果

VPC Lattice は IAM統合による細かなアクセス制御統合された監査ログ でセキュリティ面において優位性があります。

パフォーマンス比較

パフォーマンス項目 NLB+VPC Endpoint VPC Lattice Resource Gateway
レイテンシ ⚠️ 複数ホップ(NLB→Target) ✅ 直接ルーティングで低レイテンシ
スループット ✅ 高い(NLBの実績ある性能) ✅ 高い(専用設計)
可用性 ✅ Multi-AZ NLB + Endpoint ✅ Service Network の自動冗長化
スケーラビリティ ✅ NLBの自動スケール ✅ 自動スケール対応
ヘルスチェック ✅ NLBターゲットヘルスチェック ✅ Resource Configuration ヘルスチェック
ロードバランシング ✅ 複数アルゴリズム対応 ⚠️ 基本的なロードバランシング

パフォーマンス分析結果

  • レイテンシ: VPC Lattice が優位
  • 柔軟性: NLB が多様なロードバランシングオプションで優位
  • 総合: 用途により優位性が変わる

運用・管理比較

運用管理項目 NLB+VPC Endpoint VPC Lattice Resource Gateway
設定の複雑さ ❌ 複雑(複数コンポーネント管理) ✅ シンプル(統合管理)
監視・メトリクス ⚠️ 複数サービスの個別監視 ✅ 統合メトリクス
トラブルシューティング ❌ 複数ポイントの調査必要 ✅ 一元化されたログとメトリクス
マルチリージョン対応 ❌ リージョン毎の個別設定 ✅ Service Network での統一管理
学習コスト ✅ 既存技術の組み合わせ ⚠️ 新しいサービスの理解が必要

総合比較とメリット・デメリット

NLB + VPC Endpoint Service + VPC Endpoint

メリット

  • 成熟した技術: 長期間の運用実績と安定性
  • 既存インフラとの親和性: VPCベースの既存構成と自然に統合
  • 豊富なロードバランシング機能: 複数のアルゴリズムとヘルスチェックオプション
  • 詳細なネットワーク制御: セキュリティグループ、NACLによる細かな制御
  • 豊富なドキュメント: 多くの事例と解決策が存在

デメリット

  • 🤔 高い初期コスト: 基本料金が月額約$59.40
  • 🤔 複雑な設定・管理: 複数コンポーネントの個別管理が必要
  • 🤔 運用負荷: 複数サービスの監視・トラブルシューティング
  • 🤔 レイテンシ: 複数ホップによる若干の遅延

VPC Lattice Resource Gateway

メリット

  • 低い初期コスト: 基本料金が月額約$32.40(45%安い)
  • シンプルな管理: 統合されたサービスによる一元管理
  • 優れたIAM統合: サービス・リソースレベルでの細かなアクセス制御
  • 統合監視: 一元化されたメトリクスとログ
  • 低レイテンシ: 直接ルーティングによる高速通信
  • マルチリージョン対応: Service Network での統一管理

デメリット

  • 🤔 データ処理費: 高トラフィック時の従量課金($0.025/GB)
  • 🤔 機能制約: NLBほど柔軟なロードバランシングオプションがない

推奨シナリオ

VPC Lattice Resource Gateway を推奨する場合

🎯 以下の条件に当てはまる場合に最適:

  • 新規システム構築
  • シンプルな管理・運用を重視
  • IAMによる細かなアクセス制御が重要
  • データ転送量が中程度以下(月数TB程度)
  • 運用コストを重視
  • マルチリージョン展開を予定

NLB + VPC Endpoint を推奨する場合

🎯 以下の条件に当てはまる場合に最適:

  • 既存VPCインフラとの整合性重視
  • 高度なロードバランシング機能が必要
  • 運用実績・安定性を最重視
  • 非常に高いデータ転送量(月数十TB以上)
  • 既存チームのNLB運用スキルを活用したい

実装時の考慮事項

移行戦略

  • 段階的移行: 重要度の低いサービスから VPC Lattice へ段階的に移行
  • ハイブリッド運用: 要件に応じて両方式を使い分け
  • コスト監視: データ転送量の実測値に基づく定期的なコスト見直し

技術的考慮事項

  • モニタリング設計: VPC Lattice の新しいメトリクスに対応した監視設計
  • セキュリティポリシー: IAMポリシーベースのアクセス制御設計
  • ディザスタリカバリ: Service Network の冗長性設計

まとめ

AWS VPC Lattice Resource Gateway は、従来のNLB+VPC Endpoint構成と比較して、コスト効率性・運用性・セキュリティ機能において優位性を持つ新しいソリューションです。

特に 新規システム構築シンプルな運用 を重視する場合には、VPC Lattice の採用を強く推奨します。一方、既存インフラとの整合性運用実績 を重視する場合には、従来のNLB+VPC Endpoint構成も依然として有効な選択肢です。

最終的な選択は、システムの要件・制約・チームのスキルレベルを総合的に評価して決定することが重要です。

参考

AWS 公式ドキュメント

AWS ブログ・技術記事

価格情報ソース


本分析は2025年12月時点のAWS Pricing APIデータに基づいています。料金は変更される可能性があるため、最新情報は公式ドキュメントをご確認ください。

以上

参考になれば幸いです。

Author

Kenzo Tanaka

Posted on

2025-12-11

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